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東京高等裁判所 昭和54年(行コ)80号 判決

東京都江東区亀戸町一丁目一〇四番地

控訴人

日月商事有限会社

右代表者代表取締役

木下次郎こと 具次竜

右訴訟代理人弁護士

佐藤義弥

東京都江東区亀戸二丁目一七番八号

被控訴人

江東東税務署長

右訴訟代理人弁護士

青木康

右指定代理人

三上正生

箕浦和美

尾沢安治郎

主文

一  原判決中控訴人の「被控訴人が昭和四五年一二月二二日付で控訴人の昭和四一年一一月一日から昭和四二年一〇月三一日までの事業年度の法人税についてした更正のうち税額七二六万三一〇〇円を超える部分及び同日付の重加算税賦課決定のうち税額一六六万五六〇〇円を超える部分」の取消を求める請求を棄却した部分を取消す。

二  右の更正及び重加算税賦課決定のうち、右取消にかかる部分を取消す。

三  控訴人のその余の控訴を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審を通じて一〇分し、その一を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が昭和四五年一二月二二日付で控訴人の昭和四一年一一月一日から昭和四二年一〇月三一日までの事業年度の法人税についてした更正のうち税額一五四万円を超える部分及び重加算賦課決定を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

との判決。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は、控訴人の負担とする。

との判決

第二主張ならびに証拠関係

当審におけるあらたな証拠関係として次のとおり附加するほかは原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

一  控訴人

甲第五号証の一ないし九、同第六号証の一、二を提出し、当審証人鈴木寛、同金慶植の証言を援用

二  被控訴人

甲第六号証の一、二の原本の存在とその成立は認めるが、その余の甲号各証の成立は不知

理由

一  当裁判所は、当審においてあらたに取調べた証拠をも加えて更に審究した結果、控訴人の本件事業年度における益金は三〇五五万八二五〇円、損金は一〇八九万四九九五円であって、その所得金額は一九六六万三二五五円となり、これに基いて計算すると、控訴人の右事業年度における法人税額は七二六万三一〇〇円、重加算税額は一六六万五六〇〇円になるものと判断するのであるが、その理由は、次のとおり附加、訂正するほかは、原判決の理由説示(原判決一〇枚目表二行目から一八枚目裏一行目まで)と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一一枚目表九行目から同裏一行目までを全部削り、その代りに次のとおり加人する。

「(一) 別表第三の各項目のうち、18強制執行予納金(「強制執行納金」とあるのは、誤記と認める。)は、原審における控訴人代表者尋問の結果と弁論の全趣旨を総合すれば、控訴人が石田利伊知に対する家屋明渡の強制執行を申立てた際執行官の命令(執行官法一五条、執行官手続規則九条)に従い予納したものであることが認められるのであって、右は民訴法五五四条の定めるところにより執行債務者の負担に帰すべきものであるから、これを損金に算入することはできない。

また、同表1ないし17及び19の各項目につき、それぞれ同表掲記の金額を本件事業年度において、控訴人会社が支出したこと、及び14並びに19の各項目を除いて右を超える支出のなかったことは当事者間に争いがなく、右支出にかかる金額が損金に算入されるべきものであることはいうまでもない。」

2  原判決一三枚目裏八行目の「同和信用組合」の次に「(なお、右信用組合がその後「朝銀東京信用組合」と商号を変更したことは弁論の全趣旨によって明らかである。)」を挿入し、その一一行目に「債務を負担したと主張し、」とあるのを「債務を負担したと主張するので、以下この点について検討する。」と改め、同行の「原告代表者」以下原判決一五枚目表八行目までの全文を削り、その代りに次を加える。

「原判決の別表四、番号5の支払利息「一三万〇五〇〇円」の存在については当事者間に争いがなく、当審証人金慶植の証言によって成立を認める甲第五号証の一ないし九と右証言及び原審における控訴人代表者尋問の結果と弁論の全趣旨を総合すれば、控訴人は、前記信用組合東京支店から

(一)  昭和四二年四月七日に三〇〇〇万円を、利息を日歩三銭、弁済期を五日後と定めて借受け、右五日分の利息四万五〇〇〇円を支払ったが、期限前に弁済したため既払利息のうち二万七〇〇〇円の払戻を受け、その支払利息は一万八〇〇〇円となったこと。

(二)  同年四月一八日に五〇〇〇万円を右同様利息日歩三銭の約定で借受け、同年五月一七日までにその利息一一万二二〇〇円を支払ったこと、

(三)  同年六月二九日に四〇〇〇万円を利息を日歩二銭六厘と定めて借受けたが、このうち一〇〇〇万円に対する利息は、その後日歩二銭一厘と改められ、これに対する貸付日から同年一二月七日までの右割合による利息三四万〇二〇〇円を支払い、残元金三〇〇〇万円に対する利息は、その後日歩二銭四厘に改められ、これに対する右と同期間の右割合による利息一一六万六四〇〇円を支払ったが、右各支払利息のうち本件事業年度分に属する貸付日から同年一〇月三一日までの一二五日分の利息は、元金一〇〇〇万円については二六万二五〇〇円(10,000,000円×0.00021×125日=262,500円)であり、残元金三〇〇〇万円について九〇万円(30,000,000円×0.00024×125日=900,000円)であって、その合計は一一六万二五〇〇円であること、

(四)  同年九月二一日に一五〇〇万円を利息日歩三銭の約定で借受け、その一二日分の利息五万四〇〇〇円を支払い(控訴人が利息五万四〇〇〇円を支払ったことは当事者間に争いがない。)、同年一〇月三日から同月二四日までの二二日分の前記約手割合による利息九万三〇〇〇円の支払債務を負担するにいたったこと、

以上の事実が認められる。前掲乙第五号証、第六号証、第九号証の一、二、第一一号証、第一二号証、第一三号証の一、成立に争いのない乙第三号証の一、第一四号証の一、二並びに原審証人早川康雄及び同永持公司の各証言を合わせると、控訴人の帳簿には支払利息としては被控訴人の主張する一八万四五〇〇円だけが記載されていたこと、本件更正に対する異議申立ての際に控訴人は被控訴人が主張する支払利息のほかに支払利息がある旨主張していなかったこと、本件更正に対する審査請求の際に、控訴人は支払利息が九七万七六〇〇円ある旨主張したが、その具体的な支払先、支払金額等の主張はなく、また右主張を裏付ける資料の提出もなかったこと及び被控訴人指定代理人が東京国税局長名により前記組合に対して控訴人と右組合との取引状況等について照会したが右組合はそれに応じなかったことが認められるけれども、右事実があったからといって、これにより直ちに前記認定の事実が否定されることにならないのは当然であって、右事実の存在は前記認定の妨げとはならないし、他に前記認定を妨げる証拠はない。また前記控訴人代表者尋問とこれによって成立を認める甲第二号証及び前記金証人の証言とこれによって成立を認める甲第四号証中には、控訴人が本件事業年度中に以上に認定したほかにも利息を支払い又は利息債務を負担したとする記載並びに供述部分があるけれども、これはいずれもその裏付を欠くものであって、そのまま採用することができないし、他に以上に認定したほかに利息を支払い又は利息債務を負担したことを認めるに足る証拠はない。

以上の事実によれば、控訴人の本件事業年度における支払利息及び負担した利息債権の合計は、一五七万〇二〇〇円となる。」

3  原判決一六枚目裏八行目に「被告主張のとおり九五四万九二九五円」とあるのを「一〇八九万四九九五円」と改める。

4  原判決一六枚目裏一一行目及び一七枚目裏八行目にそれぞれ「二一〇〇万八九五五円」とあるのをいずれも「一九六六万三二五五円」と、同一七枚目表一行目に「七七七万二、七〇〇円」とあるのを「七二六万三一五〇円」とそれぞれ改める。

5  原判決一八枚目表五行目「は当事者間に云々」からその八行目までの全部を削り、その代りに次を加える。

「及び控訴人が昭和四六年二月二二日に本件更正並びに決定に対し異議を申立て、更に同年六月二一日に国税不服審判所長に対し、右各処分に対する審査請求をしたことは、当事者間に争いがないところであるが、原本の存在とその成立に争いがない甲第六号証の一、二、成立に争いがない乙第三及び第一三号証の各一、二と当審証人鈴木覚の証言を総合すれば、右の帳簿及び右の帳簿と同時に差押えられた控訴人の経理関係の書類のすべては、控訴人が右のように異議申立をする以前の昭和四六年一月二六日には異議申立及び審査請求につき控訴人を代理した税理士鈴木覚が控訴人にかわってその還付を受けたが、右帳簿、書類等のみによっては確定申告の欠缺を補正することができなかったことが認められるのであって、この事実がある以上、前記の控訴人の帳簿の差押の事実をもって、前記認定の妨げとすることはできない。」

6  原判決一八枚目裏一行目に「一八一万八、六〇〇円」とあるのを「一六六万五七五〇円」と改める。

二  以上のとおりであるから、本件更正は税額を七二六万三一〇〇円とする限度において適法であり、本件決定は税額を一六六万五六〇〇円とする限度において適法であるが、本件更正及び決定のうち右の限度を超える部分は、いずれも違法として取消を免れない。

三  よって、一部これと趣旨を異にする原判決はその限度において不当であるから、その部分を取消し、右取消にかかる控訴人の請求を認容し、その余の控訴を失当として棄却することとし、行訴法七条、民訴法九六条、九二条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石川義夫 裁判官 寺澤光子 裁判官 原島克己)

別紙一 法人税額の算出過程

〈省略〉

別紙二 重加算税額の算出過程

〈省略〉

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